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ひとつだけ本当の恋がありまして 南天の実が知っております。
のっけからこんなにもたそがれモードなのは、ブラジルを代表するギタリストバーデン・パウエルの訃報を耳にしたからでしょうか?享年63歳。いつか貴方が奏でる泣きのサンバを聴けると信じていたのに…。どれだけ人の心を動かしてゆけるかが人間としての使命。だとしたら、地球の裏側ブラジルから発信された音楽によって、私のちっぽけな胸を満たしてくれるのですから、奇蹟です。今は天国にいる貴方へラブレターを書くも、無念、この字は涙で消えました。今宵は、貴方が残してくれた珠玉
の音楽旅行ドキュメント「SARAVAH」でも観ながら、貴方の姿をたどります。かえすがえす合掌なり。
●SARAVAH「ブラジル音楽への私的ドキュメント1969」
ある日の昼下がり、海辺にて。太陽、風、昼間のビール。全てがパーフェクトに揃った歓談のひととき。1人がギターを奏でたら、つられてテーブルを叩いてリズムをとる者がいて。紅いドレスを身につけた歌姫は、貝をつなげたブレスレットを揺らしながら唄い出す。酒とボサノヴァと友情と。Little
Tokyoにて時間に終われている生活と、どちらか幸せかはおわかりですね…。リラックスモードで始まる本作品。監督であり、ナビゲーターを務めるのは、仏映画「男と女」のサントラもてがけたフランス人アーティスト、ピエール・バルー。ブラジル音楽に目覚めた彼が、当時ボサノヴァ界に君臨する新旧のアーティストたちを訪ね、そのルーツを探った本編はまさにボサノヴァの金字塔。セッションあり、即興の連続あり、観る者全てをブラジルへといざないます。
さて、本編中、圧倒的な存在感を放つのが、作曲家としてもギタリストとしてもその才能を発揮していたバーデン・パウエル本人。当時33歳。理知的な額に愁いの影。トレードマークの黒ブチ眼鏡から覗く瞳は鷲のように鋭く。紫煙をくゆらせながら、語りかけるかのように優しくギターを奏でるその姿。私の場合は、ものの3秒でオチました。セッションも熱を帯び、皆のテンションもピークに達した頃、始まりますよ〜、哀愁サンバの決定版、「テンポ・ヂ・アモーレ」。アルバム「Os
afro sambas」にも収録されたこの曲は、志が同じアーティストが共演したら、かくも素晴らしい名曲が生まれることを実証した好例といえましょう。何気なく卓上に転がるボトルの数々。煙草をふかしながらけだるく唄うのは当時のバーデン夫人マルシア。高音で聴かせてくれます。根底にある愁いあるフレーズ。「哀しみのないサンバなんてサンバじゃない。」そんなバーデン・パウエルの言葉が結実した名曲です。ちなみにタイトルの「SARAVAH」は、アフリカの言葉で「祝福あれ」という意味なのだとか。哀愁ボサノヴァに乾杯!そんな感じなのであります。
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Text:Miwa Tei/Design:Ayako Nakamura
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